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カーライル博物館 夏目漱石

公園の片隅に通りがかりの人を相手に演説をしている者がある。向うから来た釜形《かまがた》の尖《とが》った帽子を被《か》ずいて古ぼけた外套《がいとう》を猫背《ねこぜ》に着た爺《じい》さんがそこへ歩みを佇《とど》めて演説者を見る。演説者はぴたりと...
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吾輩は猫である   夏目漱石

一  吾輩《わがはい》は猫である。名前はまだ無い。  どこで生れたかとんと見当《けんとう》がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生...
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『吾輩は猫である』上篇自序 夏目漱石

「吾輩は猫である」は雑誌ホトトギスに連載した続き物である。固《もと》より纏《まとま》った話の筋を読ませる普通の小説ではないから、どこで切って一冊としても興味の上に於《おい》て左《さ》したる影響のあろう筈《はず》がない。然《しか》し自分の考で...